背徳の人形 1話
(どうしてこんな目に遭うんだ?)
考えてはみたものの答は浮かばなかった。
とにかくどうにかして逃げられないかと思いながら
脚や腕を捩ってみたが、どうやらそれも叶わない様だ。
そうこうしていると
前方に見える鉄製の階段を降りてくる影が見えた。
カン・・カン・・と響くそれは、多分ヒールの音だろうと思いながら見ていると
一緒にバーで飲んだあの女が
黒い光沢を放つボンデージ姿で現れた。
「ど・・どうゆう事なんだよ?!」
女は唇の端だけを吊り上げる形で笑みを浮かべると
僕に近づきながら話し出した。
「貴方・・・消費者金融に多額の借金があるでしょう?」
女の話だと
どうやら僕は、金融会社の罠にはめられた様で
泥酔した僕から自宅の鍵を盗みだした奴らは
身分証や印鑑まで盗んだ挙句
“用無し”になった僕の後始末を
“この女の好きにしていい”
という事にして、此処に連れてきたそうだ。
「で・・・僕をどうするつもりなんだよ?!」
そう吐きながら睨み付けた僕の頬に
イキナリ鋭い痛みが走った。
「貴方・・・命の恩人にその態度は無いんじゃない?」
そう言いながら笑う女の手に乗馬用の鞭が握られていた。

「命の・・・恩人・・・?」
「そうよ、貴方は本当は殺される筈だった
けれど・・・勿体無いから拾ってやったのに・・・・
悪い子ね・・・」
言い終わるか終わらないかでもう一度女の手が動いた。
反対側の頬にも切れるような痛み・・・
逃れようの無い恐怖に脅えながら
その女を“美しい”と思う僕がそこに居た・・・。